タイの青春映画と日本の青春映画を考察してみる

青春映画ではこんなのも人気

タイの実情も描いた作品

タイ王国の状況は決して芳しいとはいえない、現在ではプーケットを始めとする世界的にも主要な観光地域においては戒厳令が解かれるなどの措置は行われているが、国家中枢システムが集中している首都近辺については、いまだ解除の見込みはないという。そんな情勢下においては映画を作る権利も決して早々罷り通らなくなってしまう。以前から検閲によって上映禁止措置などに課されている作品も登場しているが、タイとしても衝撃の強い内容をあまり全面的に出させる内容となる作品を表に出す訳にはいかないという、そんな一面があるのかもしれない。

そんな中で現在の状況をいつかこうなるのではないか、そう予測させるような青春映画がタイ映画で発表される。その映画のタイトルは『タン・ウォン~願掛けのダンス』というもので、こちらも先ほど話したように、この国においては中々珍しい青春映画となっている。先に話したような友情を通して熱い人間関係を描いていくものなのか、と言った内容ではなく、この時はまだ軍事クーデターが発生する以前の話だったため、その当時のリアルな政治実情を表現した内容としても注目を集めた作品でもある。日本でもそうした作品が度々作られていますが、何ともセンセーショナルな話をしているのだ、なんて事を思うことがしばしばある。

ではタイの青春映画、タン・ウォンでは日本の青春映画に見られるような特徴と比べてどのような内容で表現されているのか、その点に触れながらも話をしていこう。

簡単な概要

あらすじ

とある男子高校生、ヨンとジェーは試験、ベースは卓球、ダンサーのエムは彼女のため、といったようにそれぞれが異なる願いを叶えてもらうために神様に願掛けをする。しかし神様に願掛けをしてしまったことで、ゲーポンとして伝統舞踏を人前で披露しなければならなくなってしまい、これまで踊ったことすらなかった男子高校生4人はわけもわからないまま、自身の願いを叶えてもらうために踊りを覚えていくこととなる。しかしダンサーとしてすでに活動しているエムもそうだが、伝統舞踊に関しては毛の生えていないド素人だったため、踊りを教えてくれるコーチに指導を請う。各々が各々の願いを叶えるためにも何とか覚えていく中で、4人は願いを通して自分と、自分を取り巻く環境について学んでいくのだった。

タイの伝統に倣って

この映画の特徴は男子高校生という青春時代真っ盛りな時期の少年たちの物語に焦点を当てていますが、同時に内容にはタイならではの国風文化、さらにこの作品では当時の政治などの状況から鑑みた国内の状況などが克明に描かれています。政治については決して宜しくない方向だったのでいいとして、文化という側面は気になるところ。

作品内でメインキャストとして活躍する男子高校生たちは、それぞれの願いを叶えてもらうために祠で願掛けをします。これはタイに伝わる文化で古くから願い事を叶えてもらう際には祠で願い事をして神様にお願いするという、精霊信仰が昔から風習として伝達されています。しかし願いを叶えてもらったらそれに対しての代償を神様に支払わなくてはなりません、それこそ先ほどあらすじのところで話した『ゲーポン』という代替行為の事を指しているのです。

ゲーポンとは祠で祈った願いが叶った場合において、こうすると約束を立てる風習がこのタイには存在しています。その習わしに則って作品では伝統舞踏を男子高校生が披露することになりましたが、とりわけ内容は何でもいいのです。ただタイ舞踏を奉納するのも1つであり、それ以外にはシマウマの置物や物を奉納するというのも1つの手段となっている。ただタイ舞踏は男性が踊るものではないとされているため、始まりからどうしようかと前途多難な幕開けとなっていくのです。

そうして物語は展開していきますが、この映画と同時進行で繰り広げられていくのが後に暗黒の土曜日とまで称されることとなる事件が勃発するきっかけとなる『タクシンはによるバンコク都心部占拠事件』がサブストーリーとして描かれていく。

リアルなタイの学生と国内実情を表現した作品

ストーリーとしてもタイの青春モノとして学生たちが何を思って考えているのか、また何を求めて生きているのかといった事を表現しつつ、同時にタイ国内の実情と事実をありのままに国として現在問題となっている点をリアルな視点から描かれています。内容が少し誇張していると思った人もいるかもしれませんが、大胆だと評価している人もいるでしょう。

青春と言っても国によって表現できる内容の加減は決まっているため何とも言えませんが、機会があれば見てみると面白くてハマってしまうかもしれませんね。