タイの青春映画と日本の青春映画を考察してみる

タイ映画の特徴

日本でいうところの明治期から黎明を迎える

タイ映画というものについて調べてみると、考えて見ればあまり知られていない傾向にあると言えるだろう。見ている人もいるかもしれませんが、大部分の人にすれば地上波の放送で公開されることも少なく、余程レンタルショップで積極的に借りなければお目見えすることもないといえるでしょう。日本人がタイ映画と触れ合う機会が少ないため、業界的な動きを理解するというのもすこしばかり難しいところ。ではそんなタイの映画界とは現在までどのような動きを辿ってきたのか見ていくと、その始まりは日本でいうところの明治維新直後と言える1897年頃に映画という娯楽文化が登場している。

その頃には日本人によりバンコクで映画館が開設されるなどのにぎわいを見せ、さらに1900年にはタイ人が初めて制作した映画作品が発表されるなど、業界そのものが立ち上がっていった。それからはほそぼそとした活動をすることになるが、分岐点となったのは1922年にタイ国有鉄道が映画会社を設立したことで加速し始める。ハリウッドと協力して映画製作を行い、それまでの映画とは違ったドラマ映画が登場し、一色に染められるほど人気を集めることになった。それまでタイの映画とはドキュメンタリー映画が中心となっていたたが、ハリウッドの影響力はタイにとっても大きかったようです。

1929年という世界情勢そのものが安定していなかった頃、業界全体が不況の波にあおられてしまい興行会社が戦前から戦後しばらく継続していくという負の連鎖が発生してしまう。この頃はタイの映画は経済の不安定さが顕著に出ていたため映画業界もそれどころではなかった、しかしその後黄金期となる1956年の2つめの分岐を経由し、1971年頃には国内の情勢がバランスを取り戻しつつある中で業界も活性化をしていくのだった。黎明となる当時の状況は決して良くはありませんでしたが、国内でも映画産業を重視する傾向が出てき始めたという点では大いに興味深いところでもある。

アクション映画中心に

1980年代になるとタイ映画はアクション映画が中心ジャンルとなって多数の作品を輩出するようになる。その中には経済成長とともに生じた社会の矛盾といったテーマを打ち出すなど、メッセージ性の強い作品が登場して盛り上がりを見せていく。やがてタイも年間200本という映画作品を制作するなど精力的な活動を見せ、世界でも有数の映画生産国としてその地位を明確にするのだった。

ただ制作している本数と反比例するように、タイ映画そのものが国内ではヒットするものの世界規模ではあまり注目を集めるまでには至らずに時間が経過する。そんなタイ映画が世界でも注目を集め始めるきっかけとなるのが2001年に発表された、『スリヨータイ』という作品により一挙にタイ映画ブームが巻き起こっていくのだった。これ以降、タイ映画も国際的な受賞作品が登場するなど、安定した業界模様が構築されることとなり、観衆の多くもタイにはこんなにいい映画がたくさんあるのかと関心を寄せるまでに成長していったのです。

かつてのタイ制作作品の傾向

そんなタイ映画だが、今でこそ世界でも知る人ぞ知る映画生産国として名実ともに有名となりましたが、かつて制作されていた作品ではどうしてそうならなかったのかと分析してみる。そこから見えてくるのは、世界的に見てもあまり『タイ王国』という国情を表現した作品ではない、他国の映画情景が再利用されているようなものが多かったからかもしれない。具体的にいうと、次のような感じだ。

恋愛映画の場合
西洋風でオシャレで浮気癖のある青年とお金持ち的な風貌の若い女性の恋愛話。 現実社会との実情とがあまりに乖離しすぎていたため、フィクションといってもやり過ぎ感があった
時代劇映画の場合
三国演義を中心とした時代劇。華族を中心に支持を集めますが、最近ではそれほど制作されていない。
スア映画の場合
山賊や盗賊などの冒険譚となっているが、場末の西部劇のような展開となっている。主人公が何かしらのトラウマを抱え、それによって悪事を正当化するといった傾向が強く、タイの人々にもこうした作品が一番好まれている。
社会派映画の場合
ハッピーエンドが中心となった、写実的なストーリーが中心となっている。貧しい主人公が周囲から踏みにじられながらも、最後は幸せを獲得するという王道ストーリー。中にはバッドエンドで終幕する作品もある。

タイという国を考えると

産業として考えると、タイという国ならではの映画作品を作るというのは、中々難しい。独自の色を持ち合わせたとなった内容となるとなおのこと難しい、そもそもタイの人々にとって映画とはドキュメンタリー映画こそが映画であると見られていたため、戦後から暫くの間まで上記のような他国ではお馴染みの映画作品が多く作られていたのもしょうがないだろう。

こうした歴史を一歩ずつ踏んでいったことで、現在のタイは映画産業という娯楽を世界的に広めつている。ただこうしてみても、先に紹介したミウの歌のような青春映画が稀に見る作品である、ヒットしたというケースも度々ある。そういう点では日本やアメリカと同じで、売れるとは思わなかった作品がロングランヒットを記録するという事態に発展することもある。国によって映画の好みは個人により違ってきますが、タイの人々にとってはどちらかと言うとアクション色の強いダークヒーロー系が人気を博すことが多いそうです。そういう意味では、その傾向が強い作品ほどタイの映画らしいと表現できるのではないだろうか。